号泣の滝
湾鶴



私よ、泣くな。
その容易い涙が、ほほをつたうたび
胸のどんづまりにあるお手玉のようなものが
ぎしぎしと潰れて、たまらない。

私よ、泣くな。
のどの奥にしまい込んだ感情を
涙とともに広げないよう、ゆっくり包み
少しの隙間からも漏れないよう
慎重にうごかすのだ。

私よ、もう泣くな。
流した涙と嗚咽は
きれいに拭きとってしまえ。
白い石鹸の泡で洗ってしまえ。
ついでに歯も磨いて、眠れなくても
布団にはいれ。
明日はそこからやってくる。

目をつむっても、つむっても
溢れてくる強引な涙は
山から湧き出る清水だと思い
自然の摂理に身をまかせたら、
私よ、おやすみ。
明日には、こめかみ辺りに号泣の滝ができて
観光客でにぎわっていることだろう。



自由詩 号泣の滝 Copyright 湾鶴 2007-06-19 01:20:45
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