少女
智鶴

白いワンピースが揺れていました。
荒れ狂う怒号と崩れる瓦礫の山の中で、
白いワンピースが揺れていました。

もう動くものの無い街を照らす太陽が、
真上にまで移動して、
少女のうなじを焼いていた。

少女はまるで、
全てを知っているように
全てを知っているように
歩く。



わたし、あなたをゆるします。
あなたをゆるします。

だって、そんなにも傷ついて、
貴方にも、守るものがあるのでしょう?
愛するものが、あったのでしょう?

だってそんなに綺麗な目をして、
人を憎むことなんて、
到底出来やしないもの。

ねぇ、わたし

あなたをゆるします。
あなたをゆるします。



少女は祈っていた。
白いワンピースを赤く染めて、
祈っていた。

けれども
戦争は始まってしまった。
戦争は始まってしまった。
白いワンピースを赤く染めて、
戦争は始まってしまった。


いつの間にかそれは広がって、
やがて全てを飲み込んで。



そして全てが静かになって。









白いワンピースが揺れていました。

もう動くものの無い街の中で。

ただ、白いワンピースだけが揺れていました。



白いワンピースが揺れていました。


自由詩 少女 Copyright 智鶴 2007-06-19 00:09:29
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