少女
智鶴
白いワンピースが揺れていました。
荒れ狂う怒号と崩れる瓦礫の山の中で、
白いワンピースが揺れていました。
もう動くものの無い街を照らす太陽が、
真上にまで移動して、
少女のうなじを焼いていた。
少女はまるで、
全てを知っているように
全てを知っているように
歩く。
わたし、あなたをゆるします。
あなたをゆるします。
だって、そんなにも傷ついて、
貴方にも、守るものがあるのでしょう?
愛するものが、あったのでしょう?
だってそんなに綺麗な目をして、
人を憎むことなんて、
到底出来やしないもの。
ねぇ、わたし
あなたをゆるします。
あなたをゆるします。
少女は祈っていた。
白いワンピースを赤く染めて、
祈っていた。
けれども
戦争は始まってしまった。
戦争は始まってしまった。
白いワンピースを赤く染めて、
戦争は始まってしまった。
いつの間にかそれは広がって、
やがて全てを飲み込んで。
そして全てが静かになって。
白いワンピースが揺れていました。
もう動くものの無い街の中で。
ただ、白いワンピースだけが揺れていました。
白いワンピースが揺れていました。