「動物園のペンギン」
ベンジャミン


ああ わかってる
どうせ僕には君たちの言葉なんてわからない

飛べもしない翼で空を指さす
それが何を意味しているのかなんて
僕にはわかるはずもないんだ

「飛びたい」と訴えているように見えるのも
それは僕の勝手な想像力のせいで
だから空に浮かんでいる雲が
まるで氷の大陸のように思えてしまうのも
きっと僕の錯覚にきまっている

だからって君たち
まるで一列に並んだ兵隊さんみたいに
ぴくりともせず
ただまっすぐに空の彼方を眺められたら
僕だっていろいろと考えてしまうじゃないか

ああ わかってる
どうせ僕には君たちの気持ちはわからない

だけど君たちだって
本当に見たことなんてないはずなんだ
はるかな上空から
大きく広がった一面の白い世界を

だけど不思議だ
そんな世界があることを僕も知っている
だから君たちが何となしに見上げてしまう
その空の向こうに
そんな世界があることを
僕が教えてやる必要もないだろう

だから一列に並んだ兵隊さんみたいに
ぴくりともしないで空を眺める君たちに
その理由をきくこともしない

だからお願いだ
もう少しだけ一緒に眺めさせてくれないか

   


        


自由詩 「動物園のペンギン」 Copyright ベンジャミン 2007-06-18 23:34:56
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