メガ
モリマサ公
この水滴はなんだろう
風に混じりながらほそながくのびてゆく知らない子供のよだれ
常磐道
星をちりばめてする虫たちのセックスのしずかなマジさ加減にびびりながら
自転車の沈む前輪と後輪によこぎられすばらしく空がやぶけていく
だれもいない帰り道の田んぼでどじょうがくねり
まっくろい信号機のつくりだす不安にゼリー状のサイレンがまわりながらとどき
しろい上等のお菓子のようなシラサギが水平になって空気をすべりおともなくおりたち
バイパスでまだ息のあるハトをトヨタとかニッサンがよこぎりひきちぎる
東京
ネオンとリスク
窓のうちがわでコイン精密な機械がおしだしじゃらじゃらいいながらこぼれて
服を着たちいさな動物の群れのくすくす笑い声が綿のようにぶつかりあう
ユニセフのリーフエルメスのリングホワイトバンド証明されるなにか
裂けた皮膚がまた裂けて「たすけて」ってメールがまたとどく
ユニットバスでするおしっこの音がこまかくなって
かびたすそのカーテン越しにきみがまた勃起してくる
地平線のかなたで光るマンガ喫茶のなかでぼくたちがねむたい
そのうすっぺらい壁をやわらかなおばけがでたりはいったり
平和のはずの屋根のしたから陵辱をのがれてあおあざのままのほっぺのぬれた
おんなのこがはがれたペディキュアをぬりなおしてる
この水滴はなんだろう
千葉
モルタルにペンキでできたお菓子の家で迷ってる母親たちに出口が見えない
くり返すジャンキーがマンチーで胃袋につめこむスナック埋まっていく空白がつきない
100円ショップで消費する時間
むなさわぎで見る雲の裏側にかいてある文字がひかる
なにかのかたち
この水滴はなんだろう