アイボリィ
おるふぇ

いとしめやかなアイボリィ
遥々と注がれし、名も知らぬひかり
廃墟に移ろう古代からの縲々たる遍歴に溶けいるようで―

風はどこから来たか
西か? 西は神の湿地、金属の焦げる病の、
東か? 東は優しさに衰えた文明の無機的都市

枯れ草の下で眠る涙を、乙女は芳しい仕草で見つけ、驚く
『はじめからそこには、なにもなかった』
短き命に乱れた、迷い 息吹 どこに巡ろうとも
白い猫を抱いた乙女
目を丸くして、鼓動を鎮めた後、
其の涙、天へと掲げん

風は巡らん、いと遠き天から地へと
どこへ還らん、涙を薄く飲み込んだ色のような―
其の風は、処女の麗しい頬を撫で、傾いた時計のチクタクと悲しい音さえ
喧騒のまた向こうへと、小さく小さく包んでしまう

アイボリィ、
また新しいアイボリィ

千々に限りなく続く、弔いの序列も、
豊かに見せる其れは
今日の日を静かに歌う、たゆみなきひかりの恵み


自由詩 アイボリィ Copyright おるふぇ 2007-06-18 16:44:46
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