見崎 光

思い出の残骸が
懐かしさという形で
たむろする畔
平気な顔で笑えるようになった昔を
織り交ぜて偲ぶ時間は
秒針に静寂を傾けながら
絹を編み始めた


繊細さのたゆたう
か細い枝を広げ
撫でる髪
面影を掬うように
白く染まっていく様が
何処かしら寂しげに見えて
誤魔化しの利かない空を
ただただ仰いでいた


年輪を重ねて根をはる木々に
深くなっていく皺を飾り付け
帰る場所と語らう記憶が
幸せと光りだす


風は時を乗せ
幾度も迎えた朝霧に
柔らかなまでの絹を
並べた





自由詩Copyright 見崎 光 2007-06-17 23:04:41
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