あらゆる方向に無限大
rabbitfighter

僕達は歩いてやってきた。
今日、この瞬間を共有するために。
ラジオからは素敵な音楽が流れていた。
ジョンレノンが歌ってる。imaginだ。
小さなポータブルラジオを囲んで、みんな泣いていた。
短波放送は、大陸をこえてやってきたに違いない。
なぜならその歌は、この国で歌われるにはあまりにも優しすぎたから。
地下室の廊下を伝わって、誰かがキーボードを素早くたたく音が聞こえた。
地下を這いつくばるのは重たいケーブルたち。
意識は、指先で記号に変換され、それらはケーブルを光速で走り、
液晶画面上に飛び上がり、それらはまた光速で僕の意識の中に飛び込んでくる。
いくつかの選択肢の中から僕は一つを選び、
選ばれなかった選択の先にすらケーブルは延びてゆく。
そこに刻まれているのはただの記号に過ぎない。
だけどその記号の羅列は、どうしてそんなに強い熱を帯びているのか。
どうして僕の意識を、こうも揺さぶるのか。
かつて意識であったもの。
かつて記号であったもの。
そして今、僕の意識であるもの。
その連続のいったいどこに境界線を求めれば良いのか。

宇宙の、幾千億の太陽が放射し続ける光。

その軌跡を
樹海のような僕の
深い意識のなかへ織り込んで

その光速で飛んでゆく粒子のように、僕達は永遠を信じよう。
生まれでた瞬間に消滅していく粒のように、僕達は永遠を信じよう。
ステレオスピーカーからはまだimaginが聞こえている。
ひょっとしたら、世界は一度消滅し、また同じように生成されたのかもしれない。
それとも僕達は、限り無く分裂してゆく細胞を歌にする。
ひとかけらの粒子の中で広がる宇宙。
その中で放たれたひとかけらの粒子。そしてその中で広がる宇宙。
僕達は永遠を信じよう。そのなかで。僕達は永遠を信じよう。



自由詩 あらゆる方向に無限大 Copyright rabbitfighter 2007-06-17 18:09:38
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