変奏曲
塔野夏子

空は仄かに薔薇色を帯びたグレイ
雨は降りそうで降らず
六月の気怠いカーテンを揺らして
私の哀しみを主題する風が吹く

その波紋する緩急を肌に感じながら
ただ横たわっている
あじさいは咲くのか 梔子は?
降りそうで降らない雨は
やがては降るのか……

いずれにせよ 風は
夏にむけて少しずつその旋律を変えてゆく
ただ 変わることなく
私の哀しみを主題しながら

その波紋する緩急は
けれどどこか甘く肌に触れては過ぎ
揺れる六月の気怠いカーテンの向こうで
あじさいは咲くのか 梔子は……

横たわったまま吐息を洩らす
仄かに薔薇色を帯びたグレイの空から
雨が落ちるのを 待ちながら――





自由詩 変奏曲 Copyright 塔野夏子 2007-06-17 11:25:01
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