日常
はじめ

 井戸の底から君に呼びかける 森の近くに掘られた深い井戸 井戸って一見必要の無い所にあったりする きっと旅人の為に作られたものだろう 今はもう枯れている
 僕は考え事をしたりする時にここへ降りてじっとしている 眠ってしまったこともある
 君はそれに応じる もう昼食にしようと言う 君はいつものように敷物を敷きにかかる
 井戸を上がって外に出ると 君は一人でもう自分で作ったサンドイッチを食べている 女の子座りで 両手でサンドイッチを持って
 僕は何で先に食べているんだよ と小石を蹴って君に当てようとする 君はお尻を浮かせて小石を避ける
 ちっ と舌打ちを打って僕は籠の前に座り 君の手から乱暴にサンドイッチを取ってもぐもぐと食べた
 なんで僕達付き合っているんだっけ? と僕は君に質問した
 君は四六時中あなたと一緒にいたいから と言った
 飽きない? と言うと
 飽きない と言う
 「俺も飽きないよ」と僕は繰り返した
 さっきはごめんと僕は謝って サンドイッチを残さず食べた 作りすぎだ と笑った
 君も笑った 君は下を向いてもじもじしていた
 僕は君とキスをして君を草むらに押し倒した 胸を触ると君は僕の手を見たまま気持ちよさそうにゆっくり瞬きをした
外でのセックスは気持ち良かった 君はドレスの土をぽんぽんと払うと 僕の座っている敷物のところまでやって来て隣に座って僕の肩に頭を載せた
 ゆっくりとした時間が流れる 僕が井戸の中に入っている間何してたの? と聞くと 君は花飾りを作っていたのと答えた 僕の後ろに置いてあった花飾りを取ると 僕の首にそれをかけた
 僕は半分嬉しくて半分複雑な気持ちだった
 「花は貰うと嬉しいけどすぐに枯れちゃうだろ? それがなんか嫌でさ」
 「そういうものだと思えばいいのよ」と僕の肩から頭をどけて言った 確かにそうだ
 君から学ぶことは多くて毎日が勉強になる 春のそよ風が吹いて君の匂いがした 落ち着く 君の汗も 君の血も 君の笑顔もみんな好きだ 甘い雰囲気に誘われて僕と君は横になってずっと見つめ合っていた
 夕暮れになってゆっくりとした2回目のセックスが終わると君と僕は敷物を畳んで帰ろうとした 森はもしかしたら君がいなくなった時に入る場所なのかもしれないなと思った 井戸に君の作ってくれた花飾りを入れて土で埋めるかもしれない
 そんな時が来るのはずっと先だろうけど ふとそんな不安が頭をよぎった 無口な君は何を考えているのか分からないけど(聞けば答えてくれるかもしれないけど) 僕は君の笑顔を見てると何故か安心した 太陽が君のことを知っているみたいに沈んでいった


散文(批評随筆小説等) 日常 Copyright はじめ 2007-06-16 04:23:18
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
日常