ランドサット
モーヌ。
まどろみを さめたり もぐったり
白日の 季節の かいなの なか
体力は うばわれ
けだるさに 眠って
窓を 吹いて くる
れもんの 風との トランスファー から
惑星の 青い圏の 外縁 まで さざめいて
唄声は かじかみを 溶く
ひからびた 石と 鉄 と
冷血の 人地 から とおく
やしないの 精霊は ここかしこ
ひさかたの 日ざかりの なかで
夏ばや を 告げる
積乱の 雲の はたてを
とおく かすんだ 淡き みどりを まとい
外縁と 内縁が さかいを なくす ところ
やわら木の 弧空の まろやかな 周率に
小鳥たちは うつくしく まどう
ヒィユー クルル
チ チ チ チ
けら けら けら...
エー エッ エッー
隣室に つねに あたらしい 冒険を はじめた
ぼくの 子どもの 声も あがって
聞こえない はずの
多摩川の ながれも さらさら と
さらさらに さらす 麻布に
愛( かな )しき おもいは 泳ぐ
シュヴァルツ
ワルツ...
ぼくら 踊って いる
生きて いる 浮遊... 誰かを 見つけた
右足を あげて くるり と 廻る
胸の 奥での 捕獲へ 燐火が ながれ
聞こえずに つづいてきた 痩せぎすの
フォー・ビートを 抱いて
アドリブに 入るとき
ぼくら 4拍子に なる
ぼくらは いつかの
放課後の 校庭に でた
高鉄棒の 背丈の 倍以上 ある 高さを
ものとも しないのは
都会の すきま風の アリス
同級の 少女 “ えんどう ” だ
グライダー とか 飛行機 とか
呼ばれている 技で
三つ編みを 跳ね 飛ばして
彼女は 午後の 空を 制空 した
ちぎっては 飛ぶ からだを 投げ あげて
さえずりの なかに 神話を 止揚 する
あの 布の ように
からだを 泳がせて...
雲と 川と
存在する 空と 不在の 空と
飛んだ あと なぜか
ひとり だけの ギャラリー だった ぼくに
ぼくじゃない
好きな 男子の 名まえを 教えて くれた
さら さら さら さら
愛( かな )しい ね
ぼろぼろの むらさきの
くまの ぬいぐるみが
青い ポリバケツ から
汚れた顔を のぞかせて いる
ここは 大陸の はて
( サグレス だろうか... )
“ はて は ない よ ”と
吹き 寄せられた 小鳥たちが いう
ぼくは 球体の ふところの 意識の ふちを さえずった
“ きみは? ”
“ 大陸 からさ ”
“ また もどって きちゃった... ”
さえぎる ことの ない 強い 風が
みんなを ひきちぎって 巡らせた
アー アッ アー
よろよろと つたい歩き してきたのは
ぼくの 子ども
きのうは 歩けなかった
こちらに 手を のばして
おでこを ごっちん して
ぼくの かいなに 倒れこむ
ぼくらは 抱き合うように あたため あった
子どもの 半分しかない 歯が 口から こぼれて
ひかった