君を尋ねて
はじめ
目が覚めていても夢の続きが続いているようで 月が眩しくて 星があんなにも低い位置にいる
この空気は何処からやって来るものなんだろう 僕の心を冷まし 心は熱を取り戻そうと空気に引っ張られながら僕の体を持っていく
顔が凍ってしまうような凍てつく寒さだ 僕はすぐに白い息を吐き 君のいる場所へと無意識に体を動かす 君がいるのは地底世界か それとも天国か
君の笑顔を思い出し 僕は月のある方角へと歩いていく 防寒対策は完璧だ 威圧感のある街並みが僕の進行を妨害する 僕は建物と同じ大きさにならないと上手く街を通り抜けられそうにない そしてすぐに名も無き山が立ち聳えている
灰色の街も山を通り過ぎて 僕は再び山にぶつかった 連なるパウダースノーをかけた山々 もちろん登って歩いていく 何処までも何処までも
雪原がぽつりとあった 辺りはしんとしている 鶴が片足を上げて立っている おい それじゃあフラミンゴじゃないか 僕は独りでに突っ込んだ
鶴は動き出しそうにない 何を見ているのだろう あんな小さな頭で何を考えているのだろう きっと次の目的地までの精密なデータが刻み込まれているのだろう それを何度も何度も頭の中で暗唱しているのだろう 僕達には分からない鶴語で 記憶でか
僕は鶴の近くへ行って 頭を撫でた 鶴は嬉しそうな顔をしているように見えた 人間の自己満足が垣間見えた 僕は鶴の背に乗って 鶴の目的地へ連れて行って欲しかった
いや 僕には僕の目的地があるのを忘れていた 君は先にある森の奥のさらに抜けた後の未開の地の先にいることだろう 僕の冒険は君を見つけるまで続く このままだと一生かかっても見つけられそうにない
親密な闇を潜り抜けて森を抜けると 広大な荒れ地に出た 草は雪に踏んづけられて死にかけて 木々はほとんどが折れていて腐っていて 激しい吹雪が吹いていた
僕は荒れ地を歩き続けた 手が寒くなってきた そういえば足の先も感覚が無くなってきた いつまでも続いた 僕はついに疲れてその場に倒れ 眠りに落ちようとしていた
まだ諦めちゃいけない 僕は立ち上がり 視界の見えない荒れ地を歩き続けた
しばらくすると街が見えてきた この街から君の心の匂いがするような気がした それは焼き立てのバターロールパンのような匂いだ 僕と君との思い出の匂い
街はひっそりと静まりかえっていた 時々馬車や野良犬が通りかかるだけで 煉瓦でできた街は心に染みるほど冷たかった ここに本当に君がいるのだろうか?
石畳の歩道を歩いていくと 一軒だけ明かりの灯ったパン屋があった 僕はきっと君がここにいるのだと思ってドアをノックした すると君が出てきた
僕は君を抱き締めた 君も僕を抱き締め返した 君はにっこりと微笑んで 僕の頭に降り積もった雪を払ってくれた 僕は君に今すぐ結婚しようと言った
君ももちろんええ と言ってくれた 僕達は長い長いキスをし 結婚をすることに決めた 現在 僕はこの街に住み 彼女と一緒にパン屋を営んで幸せに暮らしている