天使の悪魔
なかがわひろか

チャイムが鳴ったので玄関に出てみると
天使が立っていた
私は追われています、かくまってください
僕には断る理由もなかったから
そのまま部屋に上げた

天使は部屋に入るなり
どっかとソファに腰を下ろして
お茶だとかお菓子だとかいろいろと要求してきた
僕は天使を見るのが初めてだったので
まずは思うようにやらせてみようと
彼女の言うとおりにした

ひとしきり食ったり飲んだりをした後に
そろそろ行くわと彼女は言った
僕はまだいたらいいじゃないかと言ったけれど
そろそろここもばれるから、と
彼女はそう言った

彼女を玄関から見送るとき
彼女は
実は私は悪魔なのと言った
どちらでもいいさ
どっちにしても
僕は初めて見たんだから

彼女は初めてにこりと笑って
それじゃと言って
去って行った

(「天使の悪魔」)


自由詩 天使の悪魔 Copyright なかがわひろか 2007-06-15 02:34:38
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