きみに言えず
soft_machine


六月の雲がゆっくりと上に迫る
スーツの男が鞄の傘ではたまらず駆けだす
かたわらでぼくは
そっとつままれたまま
雷と雹を孕んだ姿で
上下するのどぼとけに合わせた
きみの乳房を
後ろからつつむ

なめくじがゆっくりと
百合の葉影で愛しあう
ほほえんだぼくらの足跡も
雨の日は同じように輝けるだろうか
信号が青に変わったことにも気づかず
立ちどまったまま濡れ続ける人
苦しみが彼女の彫りをさらに深くする
悲しみが人を気高くすることもあるように

稲光が心臓を浮かび上がらせては消える
男と女のとこしえにきみも在って
どうして
降り込む雨に躯を打たせる
霧の奥丘でピアノをなぜる
ぼくはきみをこの行にうずめるはずだった
しかし最後のことばをなくして
描線を繰り返すだけのパルス

何故
さよならとも
好きとも言えず
また微笑んでいる






自由詩 きみに言えず Copyright soft_machine 2007-06-14 18:34:39
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