呼子鳥(よぶこどり)
石瀬琳々
緑の山に響くのは
わたしの声か 呼子鳥
夏の滴りに濡れそぼち
わたしはわたしを呼んでいる
遠い風に乗り響くのは
わたしの夢か 呼子鳥
それともあのひとのささやきが
わたしの耳もとをかすめては
胸を破って過ぎてゆく
まるで鳥の形 つばさのように
見知らぬ山へと誘うのか
草を踏み分けて越えて行こう
目隠しをされてゆく前に
声を見失ってゆく前に
夏が過ぎ去ってゆく前に
そうしてあのひとも越えて行こう
樹々の宿りに響くのは
わたしの声よ 呼子鳥
夏の彩りに涙を隠し
わたしはわたしを呼んでいる