笑顔
たけ いたけ

だだっ広い公園で
私は男の笑顔に手を突っ込む
零れるほどの濃度の渦が
ゆらり くらり
と囁き合う

紙風船が空高く飛ぶ
くしゃり くわり

私の手は一瞬の間で
木々をすり抜け
プールの底を破壊し
雲に連れられ霧散し
ドンツキの道路を渡り壁で立ち止まった


くわり くわり
泣いていた幼児が耳の奥まで浸透する
私の全身が母親を探したが
孤独の空間には誰一人居ない
よく響く
伝導率の高い声だけが取り残されて
私の全身が孤独に晒される

くわり くわり
風の声が聞こえてきたと思えば
くわり くわり
鳥が歩く
くわりくわり
腕が葉っぱの色に変色したり
くわり

声が止んだ


皺くちゃの老人の笑顔が現れ
嘘か本当かの分からない笑顔は
伝達を諦めているのか
くなりと笑った大きな顔は
私の全神経に恐怖の種を植え込む


幼児は老人をも巻き込もうとする
老人は幼児をも抹殺しようとする


執拗に
対面する男は誘惑的に私を捕らえ続け
くわり ゆわり
私の全身を映しながら
終始私を笑い続けている






自由詩 笑顔 Copyright たけ いたけ 2007-06-14 12:41:12
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