その日の何日か前
なかがわひろか
死刑になることは分かっていたので
僕は宣告されてもそれほど驚くことはなかった
それよりも頭の禿げ上がった裁判長が
息を荒げて僕を叱責する様がおかしくて
僕は吹き出しそうになるのを
こらえるのに必死だった
僕は牢屋に入れられた
後何日かしたら刑が執行されるけど
それまでの間はここで暮らさなければならない
僕はそれなりに快適に過ごしたかったので
ベッドやその他いろいろなものを動かして
牢屋の模様替えをした
なかなか悪くない
朝と昼と晩には
ご飯が運ばれてきた
ご飯を運んでくる人は毎回違う人で
話しかけて仲良くなれる人もいれば
何も返してくれない人もいた
僕は刑が執行されるまでの日数を
毎日数えた
毎日一日ずつ減っていくのは
一つ一つ順番に
課題をこなしていくようで
なんだか心地よかった
刑の執行の前夜は
たくさんのご馳走が並んだ
僕は一生懸命全部平らげようとしたけれど
とても一人じゃ食べ切れるものではなかった
僕は好きな物をいつも最後に残すから
一番食べたかった物を
結局口にすることができなかった
死刑の当日
僕は
死んだ
(「その日の何日か前」)