2回目の人生
はじめ
人の脳には死ぬ寸前の記憶が残っているという
昔から言い伝えられていることだ
ということは前世は存在し 同じ人生が繰り返されているということだ
僕は牧師さんにそのことを聞かされた時恐怖した
人間は19歳からデジャヴが始まる
その時を境に人間は欲望の為に生き そうでない者は次々と死んでいく
誰も2回も同じ人生を味わいたくないと思うのだろう
金持ちに生まれた人間はもう一度人生を満喫し 貧乏に生まれた者は多くは死を選ぶ
始めはデジャヴがなんでもないと思っていた者も あらゆる物事との再会を喜ぶ者も 次第に恐怖や悲しみに染まっていく
人間は1日に1度はデジャヴを見るのだ それに耐えきれずに犯罪を犯す大人が少なくない 19歳以下の子供達はなんて無垢なのだろう
教会にはよく小さな子供達が来るが 本当に僕達大人とは違う世界に住んでいるように思う
僕は今聖書を熟読中である もっと昔から聖書を読んでいればいいと思った 毎日聖書の内容をデジャヴとして思い出すからだ それがラッキーなことなのか怖いことなのかは分からない そのせいでページの進み具合は遅い 僕は1度読んだ本は滅多なことがない限り再読しないからである 聖書は最強の書物だと思う 僕は19歳になってから毎日が夢の中にいるような気がして止まないのである
教会の仕事が終わって 僕は礼拝堂の長椅子に腰掛けてステンドグラスから射し込んでくる色取り取りの光を顔に浴びている ステンドグラスはなんて美しいのだろう 一体 誰が最初に作ったのだろう その人物の名前は歴史に残されていない 僕が彼だったら悔しがるのにな 彼はそんな名誉を欲して無かったのもしれない 毎日が再発見の連続だったのだから もしかしたら19歳未満の子供が作ったのかもしれない
礼拝堂の独特の香りが僕は好きだ 好きな子も毎日パンを持ってきて遊びに来る 何も無いが楽しい毎日だ 僕達が顔を合わすと決まっていうセリフが 「今日、もう見た?」だ 彼女は今日 ここへ来る道で子供達が無邪気に遊んでいる姿を「見た」わ と言う
僕はまだ見てないと言う 僕達は外の庭でパンを食べる 日差しが眩しく 午前中とは思えない暑さだ そして僕の屋根裏部屋でセックスをする ついでに言っておくと彼女の家はパン屋だ 彼女は今日生理の1日目だった 昔の女性はどうやって生理を処理していたか知りたいだろう? でも僕は教えない
僕は彼女を愛している 僕には両親がいない ここに預けられたまま両親は戦争に行って死んだんだ 行く行くは牧師さんの後を継いで牧師になるもりだ
夕暮れの景色がとても美しい 僕と彼女は外に出て手を繋いでその光景を見ている それは僕のデジャヴで 本当は彼女は見ていないのではないかと不安になった しかし彼女は微笑んで 綺麗ね と呟いてくれた 僕は安心し 一緒に夕暮れをいつまでも見ていた