京都三橋 
Rin.


「観月橋」

せせらぎの音は
いつのまにか、ざあざあと鳴り
錆び付いた欄干が
しとどに濡れる紫陽花の、夜

ここには愛づる月もなく
ただ名ばかりの橋が
通わぬこころの代わりに、と
かすれた時間の代わりに、と



「高瀬橋」

足音ふたつ
ずれてはみっつ
ひとつの傘で
ふたりで濡れる

桜の枝には露光り
時知らず咲く花にも似て
それでもこんな夜ばかり
美しいものすら
美しいと言えぬままに



「渡月橋」

振り向いてしまえ
この手のほかに
離すものがないのならば
いっそ
振り向いてしまえばいい
このかすかなる震えが
涙雨が
やまぬというのならば






雷鳴が遠のいたら
さよならをしよう
辿るのは家路ではなく
たどるのは、雨糸でもなく






自由詩 京都三橋  Copyright Rin. 2007-06-13 19:59:56縦
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