忘れ物
太陽の獣

木の分かれ目に砂糖水を染み込ませると
それだけで明日が待ち遠しくなる
そんなラジオ体操そっちのけの少年の目には
明日はどんな風に映っていたのだろう


罠に掛かったお目当てのカブトムシは
悠々と甘い水を吸い

罠を仕掛けた得意げな少年は
悠々とそのツノをつまみあげる

それを見ていた昇りたてのお日様は
惜しげもなく少年に光を与え

それを見ていた移りたての青い空は
惜しげもなく少年に誇りを与えた


一日を走り回って拾い集めた明日の欠片を
不器用な手で組み立てていく


…あれは一体、何だったのだろう





思い出の木はひっそりと待っていた

それは少し歳をとったみたいで

それは少しうつ向いて見えて

それは少し寂しそうに見えたけど

思い出の木はにっこりと笑っていた



自由詩 忘れ物 Copyright 太陽の獣 2007-06-13 18:46:27
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