忘れ物
太陽の獣
木の分かれ目に砂糖水を染み込ませると
それだけで明日が待ち遠しくなる
そんなラジオ体操そっちのけの少年の目には
明日はどんな風に映っていたのだろう
罠に掛かったお目当てのカブトムシは
悠々と甘い水を吸い
罠を仕掛けた得意げな少年は
悠々とそのツノをつまみあげる
それを見ていた昇りたてのお日様は
惜しげもなく少年に光を与え
それを見ていた移りたての青い空は
惜しげもなく少年に誇りを与えた
一日を走り回って拾い集めた明日の欠片を
不器用な手で組み立てていく
…あれは一体、何だったのだろう
思い出の木はひっそりと待っていた
それは少し歳をとったみたいで
それは少しうつ向いて見えて
それは少し寂しそうに見えたけど
思い出の木はにっこりと笑っていた