三百円
ヒビノナコナ

昔はプリクラとれたのにね。
と笹川さんは私に聞こえそうで聞こえない声でつぶやいた。
300円

笹川さんはクラスメイトで、
髪が黒くてまっすぐだ。
私は左右きれいに左を向くのでそれがちょっとうらやましい。
ねぇ、まいちゃん、
笹川さんは黒くて長いまつげで守られた瞳をわたしにむけて
右の手のひらをさしだした。
ひゃくえんだまが みっつ。
きれいなさんかっけいをつくってる。
2こは100とほこらしげに示してひとつだけうらむきでさみしげだ。

まいちゃんはどれがすき?

わたしはうらむきのやつを指差した。
校則違反のマニキュアに気づいて
笹川さんは怪訝な顔をしたけどすぐにニッコリ笑って、
まいちゃんらしいねといってくれた。

笹川さんは校風委員だ。
校風委員なんていってもすることなんかなんにもないので、
笹川さんもスカートを伸ばして、
髪の毛を黒く染めている。
光に当てるとちょっとだけ紫や青に見えるのがその証拠だ。

わたしの髪は茶色いけれど
時間がたてば黒くなる。
ヘアマニキュアだ小心者だ。

マニキュアがすきなんだねとにっこり笑って
笹川さんは駈けてった。

ペンペンペンと廊下にスリッパの音がこだまする。
職員室の前の廊下は西日がとってもまぶしい。
がらっと職員室のドアが開いて振り向くと

アサコの番だよ
と、まいがわたしに声をかけた。


自由詩 三百円 Copyright ヒビノナコナ 2007-06-13 14:44:03
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