安らかな時間
成澤 和樹
いつもより早く起きて町に出たら 全てが違って見えた
鳥たちも起きていない まだ薄青い朝
人々の心地よい寝息すらも聴こえてくるような 柔らかな空気だ
30分後が信じられないほどの たった一人 僕だけが存在しているかのような
静かで 優しい
神さま あなたがいるのならきっと
この無防備な朝のために 僕らの生活を赦すのだろう
暴れたあと 寝息を立てて眠る子らを見るような
そういう目で 僕らの過ちを赦すのだろう
翼や口笛が無くとも 日々の生活を彩って生きたい
慎ましく安からに 明日の朝までぐっすりと眠りたい
あなたの目が慈悲だけでなく 満たされた光に変わるように
そしてその光が僕らを照らすように
ああ もう夜明けだ
囀(さえず)りが聴こえはじめる頃は淡色で
鳥たちが遊びに行ってしまった頃はもう耐えられない 瞳が痛い
生活は希望だ 希望は痛みだ
ああ また日が傾き始めた
囀りが聴こえはじめる頃は橙色で
鳥たちが眠りに行ってしまった頃はもう耐えられない 耳が痛い
眠りは静寂だ 静寂は痛みだ
薄青い早朝の数十分 そのまどろみ
僅かな間だけだ 安らかなのは