もしもし、オレだよ。
３年前、心地よい概念に吸い込まれたオレだよ。
ほら、何でも二律背反にしてしまうオレだよ。
大変なことになったんだよ。
是非、振込んでほしい。

もしもし、オレだよ。
２年前、概念から細部に惹きこまれたオレだよ。
ほら、何でも相対的にしか見ないオレだよ。
大変なんだよ、とにかく。
いっそのこと振込んでほしい。

もしもし、オレだよ。
１年前、細部から体系に魅入られたオレだよ。
ほら、その実、視覚至上主義なオレだよ。
大変なんだから、現場は。
ここらで振り込んでほしい。

もしもし、オレだよ。
昨日、体系から現在を解釈したオレだよ。
オレはオレとしか言いようがないよ。
こんなときに名前なんて言うのはナンセンスだろ。
一か八か振り込んでほしい。

もしもし、もしもし、
親子のコミュニケーションを途絶えさせちゃダメだ。
ご存知、オレさ。
自信を持って振り込んでほしい。

それこそ大変なんだよ。
でも大変だからって逃げちゃダメだ。
大変な時こそ、それに向かっていくんだ。
銀行に向かってほしい。
銀行という体系を打ち破ってほしいんだ。
それができるのは銀行ではない母さんだけだ。

オレだよ。勝手知ったるオレだよ。
詐欺は概念じゃないんだ。
詐欺は細部に宿る。
留まることを知らない現在は
細部を足蹴にしてしまう。
詐欺は黄昏るしかないのかな。
オレはそんなことは望んでないんだ。

もしもし、オレだよ。
オレはいつだってオレさ。
大変は大変さ。
でも今日は少し喋り過ぎた。
間違ったことは言ってないよ。
それが問題なのさ。
じゃ、電話を切るよ。