スベスベマンジュウガニ饅頭
RT


ぼくの恋人はスベスベマンジュウガニだ
すべすべした感触にぞっこんさ

だがぼくには妻もいるし
彼女に会うためにそうちょくちょく海に通うわけにもいかない

シャツの裾をつまむハサミを振り払い
街に帰ろうとすれば
健気な横歩きでぼくを追い
さめざめと泡を吐く彼女に
歌を歌って慰める


いつだってそばにいるさシェリー
離れていてもそばにいるさシェリー


ありふれた矛盾をはらんだ歌に
彼女は尚いっそう泡を吐く
感激しているのかと思えば
「そんなこと出来るわけないじゃない」
カニのくせに生意気な

ぼくは彼女をすべすべ撫でながら
「それならこうしよう」
幸いぼくは和菓子職人なのだ

(だからスベスベ「マンジュウ」ガニという
 名前に惚れた訳じゃないんだぜ
 純粋な不純な動機さ)

つやつやした薄皮が
すべすべとしたおまんじゅうを
毎日たくさん焼くよ
君だと思ってたくさん焼くよシェリー


いつだってそばにいるさシェリー
離れていてもそばにいるさシェリー


歌を歌いながら
すべすべとした饅頭を焼き上げて
ポケットにひとつ忍ばせて帰宅

妻の目を盗んで布団の中
すべすべとそれにふれる

いつだってそばにいるよシェリー

なあに見つかりそうになったら
口に入れてしまえばいいことさ
妻との生活を壊したくはないからね



自由詩 スベスベマンジュウガニ饅頭 Copyright RT 2004-05-12 19:26:45
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