ブルー・ブルー・ブルー
雨宮 之人

気付いてみれば
そうか、俺たちは流浪しているのか
街の名前は今
4度変わって、新しくなった

帰る場所があるだけで
何度も境界線をまたいで
風に吹かれなくても、俺たちは
根無しヨモギの真似事をしているんだ

こんな晴れた日には
こんな青空の日には
終点まで降りないでいたい
こんな
満員電車でも空が飛べそうな日には

繰り返すには、死ななきゃいけないんだよ
心が停まってしまっていることに
俺はいつから気付かなくなったろうか
こんな晴れた日には
思い出されて泣きそうにもなる

青い、青い
街のいびつな地平線の向こうが
青い、キラキラと、青い
思い出すよ
あぁ、名前まで思い出すよ
初恋の、あの子の顔とか

あの子は今、何しているのかな
仕事はなんだかサマにだけはなってきました
明日の予定は10時から会議です
こんなこと手紙にだって書けないよ


俺はそこそこ元気です
金曜には心が元気になります
今日は空が青いです
雲ひとつなく快晴です
電車の中で手紙を書いています

こんな晴れた日には
どこか遠くへ行きたくなります
君の事を、思い出します
こんな晴れた日には
空だって飛びたくなります
目的地は、君の住む街です



いつだって最前線にいるよ
世界と俺との境界線上で
明日と今日との変更線上で
塗り替えながら、犯されたのはどっちだろう?

汚れたわけじゃないさ
忘れたわけじゃないさ
思い出という言葉が、いつからか重さを増してきただけ

隣のおじさんが訳知り顔で
それでも何とか生きてゆけるのさと
歯車になりかかった姿で諭すんだ

こんな晴れた日でも
関係なく電車は走って
街はいつものように動いている
いつもと同じ、俺もその中にいる

青い星の
青い空の、下にいる


自由詩 ブルー・ブルー・ブルー Copyright 雨宮 之人 2007-06-12 12:51:30
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