〜金沢小品集〜
服部 剛
風ノ葉
こころには
埋まることなきすき間あり
葉の揺る茶屋に
独り佇む
椀
空の椀
ひかりのにじむ
底のまるみに
庭ノ木
さやさやと
只さやさやと
幹は揺すられ
風去りし後
時間は止まらん
水撒き
水をやる
給仕人の丸腰に
うつむく花も
空を見上げん
車葉草
ただ独り
両葉をひろげ
凛と立つ
か細い茎の
しなる強さよ
ひだまり
雲間から
あかりの射した
庭の隅
草花は皆
天に属さん
墓ノ唄
田のほとり
墓石が三人肩並べ
人影のびる
夕の畦道
古き唄声
空へ還らん
※ 6月11日 金沢・東茶屋街「志摩」にて