海賊
はじめ
巨大な波が船を覆い被さって船員達は一気に目が覚めた
ギラギラと照りつける太陽が眩しい
船底が水浸しだ
片足の無い船長に怒鳴りつけられ 船員達は踊る強靱な肉体を動かして水捌けをする
目的地はとある街の骨董屋で見つけた古めかしい地図の指し示す宝島 船長率いる海賊団は各地の港町を荒らし 他の船を襲い 金銀財宝 女子供 食料を略奪し 好き放題やって 人々の脅威となっていた
船長は望遠鏡を見て 地図と照らし合わせ 「面舵一杯!!」と張り叫んだ
威勢のいい木の軋む音を辺りに響かせながら 海賊船はゆっくりと方向を変え 全力全身で宝島へ向かった
宝島の上の空は暗黒の雲で覆われていた 激しい嵐に耐えながら船長と船員達は小型のボートに乗り換えて島へ上陸した
島は密林で濃く覆われていた ジャングルを抜けるのにも一苦労で 仲間の多くは誰かが仕掛けた罠にはまって姿を消していった 船長は微動だにもせず黙々と前へ進んでいった
最後の難所となる灰色の岩で建てられた洞窟に辿り着いた時には船長一人となっていた 船長は蔓を使って入口の崖まで飛び移った 中へ入って行くと 蛇や蝙蝠が行く手を拒んだ しかし船長は長剣でズタズタとそれらを切り刻んでいった 冷酷な彼の頭には宝の一文字しかなかったのである
ついに宝が目の前に差し掛かろうとしたその時 床に穴が空いて船長は遙か底まで落ちていった 必死の思いで立ち上がるとそこには 今まで海賊達に殺されていった人々の霊が立っていた 冷徹なさすがの船長もこの時ばかりは腰が抜けて 壁の行き止まりまで後ずさりした ぼんやりと青白く光る霊達は手を広げて船長に近づいていき みんなで首を絞めた 船長は口から泡を吹き出し息絶えた 霊達はうっすらと微笑み そのまま消えていった
船長と船員達は亡霊となって海賊船は幽霊船となった 亡霊になってもやることは同じで 各地を荒らし回り 他船を沈め 自分達に相応しい肉体を永遠と探している 船長の手にはあの宝の地図が握ってあり 自分達を殺した人々の霊の行方も探している 天国まで行ってはそれらの人々を再び略奪し 奴隷として働かせた こうなると地上と天国の天使達が黙っているわけはなく 海賊達の討伐を開始した
天使達と海賊達の戦いが始まった 不死身の亡霊達は武器を通り抜かせて天使達に苦戦を強いらせた
しかし天界から亡霊達に効く武器を授かり徐々に海賊達を追い詰めていった
最後に世界の果てで天使達は海賊船を破壊し 海の落ちる崖へ落とすことに成功した こうして世界の海は平和になり 人々は安全に航海することができるようになった 今はもう海賊達は伝説の中でしか存在することができない