希な望み
松本 卓也

恋なんてする時にするもんさ
そう悠長に構えているうちに
あと二年で三十路なわけで

休日の大半は睡眠で
晩飯には賞味期限切れの焼きソバ
赤ウィンナーに安物の豚バラ
三分の一以下に薄めた焼酎

最近増えた迷惑メールには
いつも同じ文面が記されていて
面白みの欠片も無い
もう少しそそらせてくれれば
多少は誘惑に乗れそうなものを

等身大の自分に
可愛げなど有りもしない
嘯いているのは己の心だけ
不自然な交通量を誇る国道沿い
行き交う車のエンジン音に
人知れず孤独を癒しながら

嗤う対象は何なのか
今日も月光は見えていない

積み重ねた言い訳で
救われている錯覚に溺れながら
偽りの希望さえ詠えない

何の意味がある?

問いかけは宵闇に沈み
空気を引き裂く音に紛れ
いつに無く意味の無い形を作っていた

いつ頃から見失い
いつ取り戻せるのか
少なくとも認めざるを得ないのは
生きる事そのものに刻まれた
刹那の贖罪を果たしていくだけ

何も求めないまま
何を待ち続けるのか

冷え込んでいる心が書き記す
売れる見込みの無い言葉

小僧どもには分りもしない
転がる現実に掘り起こされた
虚像が示す道標には

差し込む陽射しを待ち望み
揺れ動く事のない風車が
意図しない詩を詠えるよう

それだけなのに



自由詩 希な望み Copyright 松本 卓也 2007-06-12 00:25:56
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