博士からの手紙(アパルトマン推敲)
yoyo
ジョセフィン博士の勧めで
手紙で紹介された
アパルトマンに引っ越すことにした
もう親離れしなければと
0号室は管理人の夫婦が
1号室からは芸術家の卵たち
ここは芸術を育てる部屋
変わり者がそろっているらしい
特に僕が気に入ったのは
洋風の建物に蔦が絡まり
階段の手すりは金メッキだった
こっそり夜中にしたのは
鍵穴から住人を覗いては
奇行を楽しむことであった
ダンスのレッスンをして
叱られた娘は宙を浮き
ロケットエンジンで青空へ
傑作を大成させようと
彫刻家は自分を削りはじめ
とうとう芯がなくなり透明人間
作曲家はおたまじゃくしで
譜面を書いて
あっという間に孵化し蛙で大合唱
ヴァイオリニストの美女は
アルデンテパスタを弦に
弾いて弾いてうっとりと
言うとおりにしてよかったと思っている
しかし、ジョセフィン博士のピアノが聞こえなくなった
どうしているのだろう
そして僕は一番奥の部屋に飾ってある
19世紀の絵画に飛び込んだ
今も僕は平泳ぎで泳ぎ続けている