旅の夜明け 〜能登号にて〜 
服部 剛

長い長い 
夜が明けてゆくよ 
夜行列車で目覚める 
旅先の朝だよ 

寝ぼけ眼を手でこすり 
車窓の外へ目をやれば 
松林の向こうに 
只静かな海は広がり 

振り返れば 
雲間に覗く朝陽を映す 
鏡のような田の向こうに 
立山の白い峰々は 
雲上に頭を入れて

さぁ何をしようか、旅先で 
とろける刺身を食べようか 
金沢小町をひっかけようか 

海沿いを走る線路の向こうに 
姉ちゃん夫婦と5歳の姪や 
素敵な友と彼女まで 
この俺を待っててくれる 

まったく皆 
仲睦まじく 
うらやましい限りであるが 
ふーてん者のこの俺の 
いつも隣にいてくれる 
黒いトランクが親友さ 

旅する時はいつだって 
長崎の天主堂で両手を合わせた時も 
長野の善光寺で小銭を投げた時も 
寂しがり屋なこの俺の 
愚痴を黙って聞いていた 
たった一人の親友さ 

ファスナーの 
開いた隙間の中身には 
金で買えない旅情の夢が 
ぎゅっとつまっているのだよ 

そろそろ 
到着前の目覚まし時計が 
旅の始まりを告げる頃だ 



 ※ 6月10日・午前5時・能登号車内にて 





自由詩 旅の夜明け 〜能登号にて〜  Copyright 服部 剛 2007-06-11 05:12:57
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