夢の浜辺にて
銀猫


浅い眠りのなかに
潮の匂いと砂を踏みしめる音がして
わたしは海辺にいるらしかった

裸足に海水は冷たくはなく
貝殻の欠片を拾い上げても
その尖った先は指を刺さない

(きっと夢なのだろう)

少しかなしく諦めながら
浜辺を歩く

誰かに向かうでもなく
誰かと連れ添うでもなく
さくり、という音だけが真実味をもって
ただ夢の浜辺を歩いていく

ポケットを探ると
無造作にたたんだ便箋が入っており
幾度読もうとしても
文字が涙で滑り落ちてしまう

(夢なのだから)

そう自分に言い聞かせて
またかなしささえ諦める

さくり、さくり、
ゆっくりと足を差し出しながら歩く
空ではうっすらと
月が明け方の爪あとを残している

何処へ行きたいのだ




自由詩 夢の浜辺にて Copyright 銀猫 2007-06-10 22:25:37
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