地下鉄
佐藤伊織
*
タキオンが像を結び
無数のクラゲが空から
淡い光を放つ
*
どこまでも歩いていっても元に戻ってしまう
三畳間の宇宙に
*
生まれてから白痴に至る世界
*
笛を吹いている神の
脳髄は既にない
*
淡い光が
深い闇を行く時
それを
誰もみることもなく
その光が闇を進む時
そして
その光が消えるとき
何も
生まないだろう
世界は白痴に至り
脳髄はすでにない
*
救われたいと
願う人の列が
三田線の地下道に
*
列車がくる
無数の人を乗せた列車が怖くて
ああ
列車がくるのだ
この地下を轟音を響かせて
無数の無数の無数の人を乗せて