コーポR・402をひっそりと辞し
Six

 コーポR・402をひっそりと辞し
 もう二度と戻ってこないことになってしまった
 あなたへ

 (えっ、本当にもう二度と戻ってこないの?
  どうしてなの?
  わたしには訳が分からない)

 つきたての餅とあなたの所謂「いい女」と
 頒布会から送られてきた今月までのワインなどを
 あなたの前に置くとぎっしりいっぱいで
 あなたがますます遠くに感じるから
 でも置かないわけにはいかない
 あなたの好きだったものがたくさんありすぎるから
 これはあなたのせいです

 あなたが「美しい」と溜息をつく
 幾つものシーンが
 くるくると何度もリピートされる
 恋人が階段を上る足音
 喫茶店に入ってきたときの恋人の顔
 自分を見つけたときの恋人の顔
 決して色褪せないフィルムの中に
 永遠に封じ込められることになってしまった
 あなたへ

 (永遠というのがありえないとすれば
  あなたはどこに行ってしまったのだろう)

 「ジャンゴの指使いには遠く及ばないけれど
  でもいいセンで弾くことはできますよ」
 今となっては、
 それは謙遜だったのか
 はたまた自慢だったのか
 もう分からないではないですか!

 からっぽになったコーポR・402で
 ギターの音もあなたの微笑みも
 何も聴こえないのに
 一体何がこだましているのか

 誰かわたしに教えてください


自由詩 コーポR・402をひっそりと辞し Copyright Six 2004-05-12 07:49:06
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