二〇〇四年週間激写ボーイ九月号
土田

 ぼくは、古いほうの町立図書館で、目の玉を血走らせながら、二〇〇四年週間激写ボーイ九月号を探していた。いくつもの棚を片端から調べていったが見つからなかった。それでもぼくは黙々と次から次へと虱潰しに棚を探していった。不思議と疲れはなかった。でもなぜか陰茎だけがギンギンにいきり立っていた。それは今のぼくの精神状態においてはとても自然なことだったが、ぼくはとてもそれだけが不自然に見え、とても気持ち悪かった。それからというもの、ぼくはずっと嘔吐感に襲われた。それでも二〇〇四年週間激写ボーイ九月号を探すことをぼくは諦めなかった。次の棚に向い、右端から一冊ずつ手にとってタイトルを見てゆく。「月に吠える」「青猫」「蝶を夢む」「氷島」「宿命」。なんだか陰気くさいタイトルばかりが続いた。しかし一冊一冊の本の重さがひしひしと体に伝わってくる。手が一瞬汗ばみ、一瞬にして乾く。陰茎が敏感になる。「詩の原理」これも違う。かび臭い本を元の場所へ戻す。次の本へ手を掛ける。パンツがぬめる。嘔吐しながらパンツがぬめる。ズボンといっしょにパンツを脱ぐ。草原で緑を犯したくなる。全身に鳥肌が立つ。どこかで蛤の割れ目から何かが光り、ぼくをずっと見つめている。ばくてりあの耳と足と口と鼻を犯したくなる。ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、ちら、と、なにかがぼくの陰茎をくすぐる。ねっとりと得体の知れない何かが手につく。雲雀料理を貪る。蛇のようなあそびをする。その手があまい菓子になる。ぼくは決して都会を愛さない。ふらんすを愛さない。そう、図書館裏側の稲刈りを終えた田園の上で、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、てふ、と、ああ、気持ちいい、気持ち悪い、嘔吐臭が充満している。おるがんの音がする。かなしい女の匂いがする。陰鬱なのか?いや躁鬱だ。コマ送りになる。描写も感情も匂いもすべて。増す。さらに増す。速く。もっと速く。そして止まった。いつの間にか点いていた図書館の蛍光灯がすべて消え、かすかに遠くで光る馬鹿でかく型の古いワープロが、制服を肌蹴た裸体に添えるくだらない文章に嫌気をさし、静かに再起動を始めていた。


自由詩 二〇〇四年週間激写ボーイ九月号 Copyright 土田 2007-06-10 21:52:37
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