腹上死
おるふぇ
1
昨夜、
夢の中で
君と違う女を抱いていた
顔も知らない
名前もない女だった
気が付いた時には
腰を振っていて
目の前の女体に
魅了されながら
欲望と官能に溺れ
悦楽と快感に酔っていた
これは俺じゃない
俺の意思じゃないんだ
解ってくれるだろう
君ならば
夢だというのに
必死で弁解しながら
絶頂に至った
2
孤独な夜が嫌いな君は
気が向けば手淫をしていた
想像する相手やシチュエーションは
必ずしも俺とのベッドではなかった
寂しさを紛らす相手なら
心の穴を埋める相手なら
俺じゃなくても構わなくて
スリルと興奮が
長い夜を短くする
だから、
顔も名前知らない
ディスプレイの向こうに
相手を探していた
これは私じゃないのよ
そんな抵抗と錯乱が
指の動きに火をつける
呼吸は荒くなった後
しばらくして止まる
そして、
疲れて眠りに至る
3
これは愛じゃない
これは愛じゃない
これは愛じゃない
夢の中で
お互いは叫んでいた
俗に云うならば
魔が差したとでも
呼べばいいのか
どこか
寂しかったんだ
4
もしも来週末に
約束通り俺と君が
会うことになれば
メールでも話せなかった
秘めた出来事に対しての
罪悪感や後ろめたさという
言葉は存在しないかのように
立ち居振る舞うだろう
そして、
どこにでもいる恋人同士と同じように
最初から決まっていたかのように
ラブホテルのドアをくぐる
シャワーを浴びた後
タオルで包んであげて
そのままベッドへと
なだれ込む
5
いつもより優しい言葉
いつもより巧みなキス
いつもより長い愛撫
何かを打ち消すかのようなその行為
本当の至福は
俺と君との間にだけ
生まれる
どこか偽物臭い照明も
安っぽい壁の柄も
染みのある床も
ねえ、
あの夜よりかは
ましに見えるだろう
君の乳首は左側の方が大きくて
君の喘ぎ声は訛りが入っていて
君の愛液は粘度が強かった
顔や名前は勿論
性感帯すら俺は知っている
6
行為をしたまま
絶頂を味わいながら
君の腹の上で死ねたら
恍惚の表情で
昇華できるだろうか
強く強く
これが愛だ、と
四肢を震わせて
理性を捨て
本能を超え
二人は天国へと
逝ける、刹那