二日月
朝原 凪人

夜が控えめな口で笑っております
ニコリと、いえニタリと
時折墨色のハンケチで覆い隠しながらも
笑うのをやめようとはいたしません
ウフフと、いえキヒヒと
奇麗な弧を描く口元に見惚れ
あれは嬌笑きょうしょうであろうかと
わたくしに色情を抱いたのではなかろうかと
そのようなことを想いながら
流血の止まない深夜のアスファルトの上を
脈動に合わせ赤く染まるアスファルトの上を
とぼとぼ歩いておりました
深紅に染まりながら夜との逢瀬を想うわたくしは
しかしやがて気付くのです
血の流れの止まる刹那の間
ドグンドグンのンとド僅かな間
世界は全て夜と同じになることに
世界は澄めて夜の色になることに
嗚呼それならば
あれは嗤笑ししょう
あれは憫笑びんしょう
わたくしは失意のまま
静かな眠りに就くのです


自由詩 二日月 Copyright 朝原 凪人 2007-06-09 10:45:26
notebook Home