ノート(我いまだ まつろわず)
木立 悟
アラハバキ
傷のあつまり
攻め滅ぼされても
なおよみがえる
ただひとつの欠片から
なお猛々しくよみがえる
アテルイ
胸に突き立つ矢と刃
ひとつの穴のような赤い花
背の風を通す
生の風を視る
死の風を噛む
クコチヒク
淡いひとつの渦を失くした
親を失い 子を 兄弟を失い
自分につながる
すべてを絶たれたそのあとで
無数の渦にひれ伏されていた
ハヤト クマソ
凍りはばたく羽の行方
軋み 砕け
泣き叫びながら
飛び貫いてゆく線の先
欠けつづけ 燃えさかり ほとばしる
語るものの口から
火は立ちのぼる
歯は溶け
舌は焼けている
怒りを覚ますはずの雪が
別の怒りのかたちに突き立つ
ツチグモ エゾ
血の粉と海
砂を雪を経て
ゆるぎない足跡
風を昇り 空へ至る
空を踏み抜き 星を歩む
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート