果実
見崎 光
実りの乏しい果実は
熟しを迎える前に摘まれ
肌の感覚を忘れていく
湖面に映る白雲を
理想で描いては
草原と遊ぶ風に
木々と語り合う鳥に
旅の情緒を詠わせた
そんな他愛もない無邪気さは
手から土へと消されていく
臆病なだけの恋もまた
熟す頃には余韻ばかりが残されて
描いた憧れの褪せる速さに
呆然と流されるばかり
沈んだままの感覚で
引かれる事のない手を
生温い風が通り過ぎていく
無いものねだりの繰り返し
果実と私と恋愛と…
貴方と私と宿命の
淡さの垂れる
ハイカラ模様
不器用な駆け引きに敗北した
熟せない果実