果実
見崎 光

実りの乏しい果実は
熟しを迎える前に摘まれ
肌の感覚を忘れていく


湖面に映る白雲を
理想で描いては
草原と遊ぶ風に
木々と語り合う鳥に
旅の情緒を詠わせた

そんな他愛もない無邪気さは
手から土へと消されていく



臆病なだけの恋もまた
熟す頃には余韻ばかりが残されて
描いた憧れの褪せる速さに
呆然と流されるばかり

沈んだままの感覚で
引かれる事のない手を
生温い風が通り過ぎていく



無いものねだりの繰り返し
果実と私と恋愛と…
貴方と私と宿命の
淡さの垂れる
ハイカラ模様




不器用な駆け引きに敗北した
熟せない果実





自由詩 果実 Copyright 見崎 光 2007-06-07 21:19:03
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