ジョセフィンのすすめで
アパルトマンに引っ越す
もう親離れしなければと

０号室は管理人の夫婦が
１号室からは芸術家の卵
ここは芸術を育てる部屋
変わり者がそろっている

特に私が気に入ったのは
洋風の建物に蔦が絡まり
階段の手すりは金だった
こっそり夜中にしたのは
鍵穴から住人をのぞいて
奇行を楽しむことだった

ダンスのレッスンをして
叱られた娘は部屋を飛び
ロケットエンジンで空へ
傑作を作成しようとして
彫刻家は自分を削り始め
芯がなくなって透明人間
作曲家はお玉じゃくしで
譜面を書き歓喜していて
たまにかえるになってる
ヴァイオリニストの女は
アルデンテパスタを絃に
弾いて弾いてうっとりと

１９世紀でとまったうち
シャワーが水になった時
その瞬間時空に歪ができ
不朽の名作に吸い込まれ
食事は静物画からとって
偉人の苦悩をあじわった

あれからアパルトマンを
１歩もでていないなあと
夕暮れに響くピアノの音

そういえばジョセフィン
姿を見かけなくなったな
どこに行ったのだろうか

私はこうして絵画の中で
平泳ぎで泳ぎ続けている