夜明け前
はじめ
夜空から眠りながら流れ込んできた闇が目を覚まして何処かへ消え去ろうとする頃 夜明けがやって来る
生き物達は眠りから目を覚まし体を伸ばして1日の到来を冷たくなった皮膚や外殻に感じる
僕は今夜も眠らずにぼつぼつと詩を書いている 永遠に朝が来なければいいなと名残惜しく思う
僕は欠伸をして視界と意識をはっきりさせる 詩の行が埋まる毎に僕の気分は熱くなってくる
パソコンを通して外の世界を空想する 星達が空を独り占めして泳いでいる
けどもうすぐ星達は消えなきゃいけないのでシンクロナイズドスイミングのショーは終わりだ
それを観覧していた生き物達はふわぁぁと欠伸をして他の大勢の生き物達と反対に思い思いの時間の眠りに就こうとしている
ジャングルでは暗い闇に覆われていて生き物達の鼓動が聞こえてくる それは黒人民族の軽やかなリズムのようで僕の関心を森の奥に向けさせる
太陽の光を恐れてか 生き物達の気力を食らう闇の妖精達は一目散に地球の裏側へ逃げていく 生き物達は太陽から再び気力をもらうのだ
雀達の盛んな鳴き声で僕は現実に引き戻される カーテンを開けてみると空が少し明るくなってきて 月が眩しそうに体を細めている
僕は詩を書き終えて時間を見てみると朝食までにまだ十分な時間があった 何もすることが無いのでソファーに横になって両腕に頭を組んでじっと時計の針の音に耳を澄ませていた 規則的に動く秒針の音はさらに頭を冴えさせて僕に宇宙の根本原理について考えさせた
しばらく目を瞑っていた たまに通る車の走り去る音が心地良く聞こえた きっとみんなあの公園へとおいしい空気を吸いに行っているのだろう
気が付くと僕は眠っていた 目が覚めた頃には本格的な夜明けが迫ってきていた 空が橙色に輝き 朝の喧騒が遠くから聞こえてきた
星も月も見えなくなって 空が青くなった 始発のバスが家の横を横切って 人々が起き出したような気がした
家族が起き出して 階段を降りていく音がした 僕はスエットパンツからスーツに着替えて下に降りた テレビではニュースをやっていて 新聞では政治関連について一面で載っていた コーヒーが沸いていてトーストが焼け上がっている匂いがした
家を出る時 まだ太陽は出ていなかった 駅まで自転車に乗って行く 眩しく 後頭部が熱い 長い坂を下っていって活発になった街の駅の駐輪場に自転車を止める
空いている電車に乗って景色を眺めるのが一番好きだ 2回電車を乗り換えて会社に着く そしてデスクからやっと昇ってきた太陽を見るのだ 長い夜明け前だった