水町綜助

海が黒いね
ひび割れているの

それはあの大きなタイヤだけだよ

もうずっと
さっきあなたが
持ち上げて
少しだけ転がすまで
倒れたままだったね

ひび割れるまで

ほら海の
このまっ黒い海のむこうをみてみなよ

ガラスでできた光の島だ
石英かな

塩だよ

波が透明で
打ち寄せるたび
こおろぎの鳴き声みたいに
明滅している
あそこは心臓でもあるんだ

それ以外にはなに?

空港だ

飛行機が

飛び立つ

銀色の飛行機ばかりがつぎつぎと飛び立つ

ぼくたちの

拍動する

心臓だよ

*

しんでは
いきるように
光につんざかれては
切って落とされる
そんなふうに
近づきすぎた太陽を
真新しい
緑色のフェンスはすかして
ぼくたちはいちいち切り刻まれながら
学校のなかを歩いている

もちろん
ぼくたちの肉片は
切り落とされて
たぶん赤いまま
来た道に落ちている
だから帰れなくなることはないんだ
いすの下で
昼寝をしていた
あのねこが
めを覚まさなければ

赤い
たてながな
夜を
とじこめためを
ひらいて

瞳孔をきゅっと窄める

そのせまいあなに
あなたいつもはいりたがるじゃない
みをこごらせて
はりに
なって

そうだよ
だからきみと
あるいているんだ

こすれながら

皮膚は皮膚で
にじむけど
まざりあうことは難しいね

あなたのよわいところと
わたしのすごくたよりないぶぶんを
できるだけ
うすくなるように
すりあわせて
けずる

まざらないよ

まざるよ

ぼくたちはまざらない

ばらばらに
しんでしまう

そうね
あたらしい円ができるわ

たぶんわたしのからだをかりて

あなたは
ひとりね

*

円は収縮する
ひとつの夜を
スポンジに含んで
それといくつもの
朝と昼と夜も

それを握って
搾るのはたやすい

だから真ん中に穴を穿って

この海辺にころがしておこう

ひびわれるまで

潮風と

海を渡る

甲高くのぼりゆく
エンジンのひびきに
さらして


そうしてぼくはきみのてをつなぎつぶやくだろう

わすれた って


















自由詩Copyright 水町綜助 2007-06-06 23:02:35
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