「エア」
ソティロ

「エア」






朝に
日差しがつよくて
風は涼しい朝に
特にとても疲れて
寝床に倒れるとき
ふっと
包まれてしまう
ことがある
すごく静かで
時間はゆるくて
空気に似た
布、を
そうっとかけてもらったような
ああ、きた
と思う
それでぼくは
かなしくなる準備をはじめる
耐えるため、ではなく
すべて受けるための
逃さないための
はじめは見つめられる
それから
布をなおしてくれたり
そんな
ずっと近くにいる
存在を淡く
しかし確かなものとして感じる
居ないひとの
それは反芻ではなく
あくまで今のできごとで
目には見えない
でも
温度やにおいや
触れたときの感じ
がおなじ、で
そのうちに
笑顔を見たときの気分になる
花が咲く
かさなる
満ちてゆく
ぼくのなかにも
ぼくは
うれしくて
うれしくて
でも同時に
かなしくて仕方がない
ここに居ないひと
だということを
あまりにつよく知っているから
話はしない
わかっているから
ただぼくは
このままゆっくりと
抜け出して
溶けたい
と思う
その時
きっと
とても安らかで
涙が溢れそうで
でも声を出すと
空気が揺れて
こわれて
消えてしまうし
これからも
続いてしまうことも
わかっている
このままで
ここに、居る
それがまた
かなしくて
そして
かなしみが
やがて
やさしさにつつまれて
甘みを帯びる仕組みも
きちんと知っている
ゆるやか、に
いつのまにか眠っていて
関係のない夢をみて
起きたあとでも
からだのなかに
しばらく残っている
てのひらをみて
そっと、握る


自由詩 「エア」 Copyright ソティロ 2007-06-06 03:21:55
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