ちゃんぷ
池中茉莉花

北国にも短くて長い夏がやってきた
こんなところでそだったから、素子はあつさに弱い
ぎんら ぎんら の お陽さまは こころを もえたたえてくれる
でも 素子のけあなは すくなすぎる 
お陽さまが もう少し静かだったら・・・

お陽さまはぷんぷんしてるんだな
コロナのたてがみで 「ええかっこしー」 して
おこころさんは あたしとおんなじ
だめよ なんでも ゆるさなきゃ
いくら 水星が ごぉごぉ ごぉごぉ 口うるさくても
いくら金星が やさしいかおして 急に おっかない りゅうさんのシャワー
ふりかけても
いくら 木星の お月さまが 1キロの氷 たくさん なげつけても
みんな お陽さまに こだわって
お陽さま お陽さま まわってるんだから
 

「ただいまぁ」
ちゃんぷ ちゃんぷ ちゃんちゃん ちゃんぷ

ちゃんぷは 子犬のワルツになってる
おちっこもれそうだよ ねえちゃん帰ってきてうれちいよ
はやくこっちきてあそぼ

ちゃんぷの耳は でっかいどう
ちわわなのに みにうさぎ とかいわれて
ちょっとだけ きずついている

あんまりちっちゃいから ときどき ふまれちゃう

きゃん
のあと ちゃんぷは いっつも 尾っぽをふる
いいよ いいよ だいじょぶだよ きにしないでね
ちゃんぷの おほしさまのおめめは いつも わらってる

ちゃんぷの はだかんぼうの おなかは ぴんく
素子の おはだと おなじ色
ちゃんぷをひっくり返して
やはらかな おなかに お顔をつける
とっくん とっくん とっくん と
ちゃんぷの ポンプが うごいてる
ずっと ずっと うごいててね
このポンプが とまったら
あたし・・・

ぼく しっているよ なんだって 
いちいち きかないけどさ、
でも いつだって ぼくは ねえちゃんの みかただよ

さあ、ぼくと公園 いこうよ
いっぱい いっぱい はしろうよ

ちゃんぷと 素子は おはだが まっかっかになるくらい
こげ茶色の空き地 走り 薄きいろの公園の山 登り
濃いみどりのくさはらにねころんだ

ちゃんぷの 透き通るような 白いからだに
背中の まあるい 茶色の お月さま
このお月さまがあたしを まあるくしてくれる
素子の みみもとで ちゃんぷが ささやく

きょうもいっしょにねようね
ねえちゃんの 夏でもしばれた あんよ
ぼくにくっつけてね
ぼくは つめたいのが きもちいいんだ・・・




ありがと ちゃんぷ
ちゃんぷがいたから ねぇちゃん あのころ いのちをつなげた
ちゃんぷの ポンプは とまっちゃったけど
いつも ちゃんぷは 白い尾っぽを
素子の こころの中で ちぎれるくらい ふりつづけている


ねぇちゃん、おもいきって おそとにでるよ
あのころの傷ばかり みつめてた なあがい なあがい としつきを
これからつづく もっと なあがい としつきの
天からふりそそいだ マナにして

だれかの ちゃんぷに なるために 


自由詩 ちゃんぷ Copyright 池中茉莉花 2007-06-05 22:10:39
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