逃走
池中茉莉花

ちいさなころの わたしは いじめられっこ
クラス中の男の子が 「ばいきん」ってよぶ
先生まで ばいきんあつかい

先生も いじめっこ
わたしのかいた 詩も 
わたしのかいた 小説も
私の手から 奪い去った
「こんなものは 勉強じゃない」

待ちに待った 雪像大会
わたしは雪を 運ぶ係
雪まみれになって ダンプで よいしょ
すずしい汗が したたり落ちる

できたものを みあげた
なあにかな

それは わたし自身だった 
ばいきんくん


わたしは逃げました
ランドセルをほうりなげて
家に向かって ひたすら ひたすら
走りました

ちょっとだけ シンデレラの快感を 感じながら

雪の中 走っているうちに
涙と雪が 混じりあって
どっちがどっちか わからなくなりました

・・・

ねえ、渉くん。そんなところにいないで
走ってごらん
ねえ、由美子ちゃん。いらない荷物をふりすてて
走ろうよ

おばちゃんと一緒に走ろう
雪の中を
走ろう
雨の中を
走ろう
光の中を
走ろう
闇の中を
走ろう

おばちゃんが手を繋いでいるから
ね、
走ろうよう


自由詩 逃走 Copyright 池中茉莉花 2007-06-05 11:41:56
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