東京パック
たもつ

肩が外れた
外れた肩を持って闇市に行った
拾ってきた新聞紙を広げ
粗末な店を開き肩を置いた
たくさんの人が前を通り過ぎた
みな急ぎ足だった
しばらくして
職業軍人らしき人が買っていった
最後までうつむき
目を合わせることはなかった
そのお金で二等車の切符を手に入れて
遊園地に向かった
車内でサンドウィッチを頬張った
ソースの味ばかりがした
遊園地には着いたけれど
帰りの運賃を差し引くと
入場するにはお金が足りなかった
大きな観覧車が場外からでも見えた
街に戻り
残ったお金で初めて女を買った
自分より少し若い感じの女には
同じように肩が無かった
お互いそのことには触れなかった
あの天井のように
遠くに行きたかっただけかもしれない
女の体臭なのか
街の臭いなのか
区別もつかなかった


自由詩 東京パック Copyright たもつ 2007-06-05 10:42:14
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