紫陽花の面影
まどろむ海月




                     

さざ波の上の真昼
季節の道を飛ぶ鳥は
大気のつぶやきを浴びながら
虚構の街に舞い降りていく


その日も
空に降りつもる
在りし時のかけらたち
光の中に傾きながら
哀しみを歌うのをやめない


雲が遠い河口を過ぎるときも
雨の背中を流れつづけていた
水の音色の悔恨
回転する銀河の夢のように
思い出しつづける


午後の後ろに隠れた迷路が
蜘蛛の描く闇に招くけど
揺れながらも丘の上の孤独に
とどまっていられるのは
愛された日々が
記憶されているから




 細かく震えながら
 思いつめた清冽な青


 霧雨の夜
 面影はいつも
 紫陽花のように
 訪れる




         








自由詩 紫陽花の面影 Copyright まどろむ海月 2007-06-05 09:42:53
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