いきづく花
soft_machine


それはいつまで経っても明日にならない
俺は始まりからずっと遠くてもっとぶ厚くて
お前の衰弱しきった太陽が忘れられない
明ける夜に挿された首のひやっとした
どの空も拒んで傾いた
それは動くものがあってならない警句
毛羽立つ黄金が揮発してゆく叫びや
ゆらめきの裡に褪色する悦びのグラスに
陰りの中で感じる生を生きるだけ生きて
俺達は近づく終わりに恐れながら
ふたりの川岸でうなだれ
ひとつの月を喘ぐ
はだかの俺を接吻で吸うと
お前は暗闇の味がしただろう
ならば
それは明日に向けて引き絞られた色彩の弓に
散るアルストロメリアが
手離すつめたい肌と肌

そして始まりからずっと希薄でもっとも幻な
忘れていたはずのお前の絵にまた巡り来る空
それは白濁したアニス酒と凍りついた霧の輪郭
夏が隠し持つナイフで傷つけられた片方の目が
自由な幸福という得体のしれない愚か者の元へ
赫ぎながらまわる器となって落ちて
粉々に割れてしまうまで落ちてゆく
ならば
アマリリス
せめてお前の花だけは
ここに残していってくれないか
閉ざした赤も好きに解いて構わない
重なる躯に潜む空白はあの雲のように
少しばかり宙に浮かんだ
名前のないかなしみだから
何かが息づく存在のお前は
これ以上散ることのないお前のために汲まれた水と
誰かのあたらしい色に染まって
いつかゆくあの径に

咲いてくれ、崩れ、高らかに






自由詩 いきづく花 Copyright soft_machine 2007-06-05 03:29:59
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