迷ひ路
朽木 裕

滅びの唄をジュラルミン・ケースに詰めて歩く。


血がさんざめいて、夜。


吊るされた男と目が合って、

その目の中に死神を見た。


「貴方ノ狂気が見タイノデ、
夜に閉ジ込メテモ宜シイデスカ?」


喉から洩れ出る空気にのせた声は響いて 雨。


「君の愛で汚してくれるなら構わないよ」


(出来っこない。君には出来っこないよ。)


ひそやかな呼気を塞ぐ血の臭気に

鼓動が跳ねる。


時の急降下。


薔薇の散る閉鎖空間で

口唇にこびりついたのは



此の世で一番、綺麗な君の 赤。


自由詩 迷ひ路 Copyright 朽木 裕 2007-06-04 22:21:19
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