三兄弟の末
なかがわひろか
子どもが三人産まれました
どれから先に取り出したのか分からなかったので
適当に順番をつけました
今日からこのヒエラルキーにしたがって
彼らは生きていくのです
一番上のお兄ちゃんは
産まれて三日後に死にました
一人だけ体がとても小さくて
私は仕方がなかったと思っています
二番目のお兄ちゃんは
必然的に一番上のお兄ちゃんになりました
本人は特に気にしていない様子でしたが
一番というのは何においても
良いものです
三番目の弟は
結局二番目になっても弟のままでした
弟は二番目のお兄ちゃんよりも
大きく成長しました
ある日三番目の弟が言いました
僕の方が身体が大きいから
今日からお兄ちゃんにしてくれよ
二番目のお兄ちゃんが言いました
そんなの無理さ
身体の大きさが兄弟の決め手になんかなれやしない
私は二人の言い分を聞いて
仕方がないので
半分をお兄ちゃん
半分を弟にしなさいと言いました
二人はああだこうだと相談して
結局二人の身体を上下に切って
それをお互いに交換して付け替えるという結論に至りました
まず弟がお兄ちゃんを二つに切りました
おい、お前も早くしろよ
そう弟に言いました
弟一人では無理なので
私が弟を二つに切ろうとすると
何を思ったか
弟は私を半分に切り始めました
私は弟が何をしたいのかよく分かりませんでしたが
弟はとても大きいので
今更私が抵抗しても無駄です
私は黙って切られました
二人の身体を切り終えた弟は
ふうと息をついて
一休みしました
お兄ちゃんはイライラして
弟に石を投げながら早くしろ、早くしろと言い続けました
弟はお兄ちゃんに投げられた石を簡単に避けながら
お兄ちゃんの元に行って
お兄ちゃんの上半身をむちゃくちゃに殴りつけました
お兄ちゃんの上半身は
もちろん立ち上がることができなかったので
一方的にやられ倒されました
お兄ちゃんの上半身が死んだ後に
それを見た下半身は
急いでその場から逃げ出しました
弟はお兄ちゃんの下半身も追いかけようとしましたが
お兄ちゃんは足だけは速かったので
追いつけませんでした
弟は途中で諦めて
私の元へ戻って
また私を一つにくっつけました
少し腰の位置がいびつになりましたが
私はなんとかまた一つに戻ることができました
今日から僕がお兄ちゃんでいいよね?
弟がそう聞くので
仕方ないわねと私は言いました
こうして弟はお兄ちゃんになりました
(「三兄弟の末」)