山中 烏流

バニラシェイクが
白く、あぶくを吐き出して
私の頬を
愛撫している
 
フルリレロと銘打った
ソフトクリイム
(キットカットフレイバア)
の、カップは
見て見ぬふりをして
壁の反対側を
睨んでいる
 
 
窓の向こうでは
たくさんの生き物が
様々な言語を使用して
日々を営んでいる
いるから
 
ここから出る前に
ゴミ箱に棄てられている
使い古しの辞書を
拾って、理解しなくては
ならない
 
 
 (向かい側の生き物は)
 (電波のやりとりを、している)
 
 (私はそっと)
 (その、電波を捕まえて)
 (手折る)
 
 
噛み潰された
ストロウの先っぽは
本来の役目から
外されてしまって
 
プラスチック製の
スプウンの鼻先に、そっと
雫を
落としてしまう
 
 
 (そこに、塩分は)
 
 (存在していない)
 
 
背中を丸めた
少女のことを
 
一体誰が
咎めたと、いうのか。
 
 
 (そこに、言葉は)
 
 (存在していない)
 
 
バニラシェイクが
斜めに倒れて
未来を見つめ始めたのを
確認して
 
私は辞書を、ゴミ箱へと
戻した
 
 
息を、吐いた。


自由詩Copyright 山中 烏流 2007-06-03 23:23:04
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