12,13P 「短歌2」より 平成元年
むさこ

加茂川に降る雨と共に昭和逝く
 何時もと変わらぬ景色まぶしく

編隊のかたちに鴉帰りゆく平成となる日の夕空を

永かりし昭和の御代も終焉となりて
小雨降る 夜となりけり

親しめぬ言葉と思い目をやりし
卓の湯呑に茶柱が立つ

何回か呼ばれて居たらし物思い
してゐし吾れに優し声もて

湯の中の白菜色よく茹かれぬ
うれしきことの有りし日の暮れ

梅雨台風まだ降り止まず家にいて
救はるる如く民謡を聞く

秋になりし証拠と思ふ子等たちが
トウモロコシを焼く匂いす


短歌 12,13P 「短歌2」より 平成元年 Copyright むさこ 2007-06-03 18:29:35
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